発達障がいの子どもの『ストレングス』を見つける【親ができるサポートと成長のヒント】

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はじめに

子供の成長を考えるとき、「苦手なことを克服させること」が大切だと思いがちですが、それ以上に「得意なことを伸ばすこと」が、子供の自信や自己肯定感につながると言われています。

発達障がいのある子供を育てる中で、親はさまざまなチャレンジに直面することがあります。

しかし、そうした子供たちは一人ひとり素晴らしい「ストレングス(強み)」を持っており、それを見つけ、伸ばしていくことで、より自信を持って成長することができます。

世の中ではどうしても「できないこと」に目が向きがちですが、子供の「できること」や「得意なこと」に焦点を当てることで、自己肯定感を育み、前向きな成長を促すことができます。

本記事では、発達障がいのある子供のストレングスをどのように見つけ、親としてどのようにサポートできるのかについて、具体的な方法を紹介していきます。

ストレングスとは何か?

ストレングス(強み)とは、その子が自然にできることや得意なこと、そして興味を持って取り組めることを指します。

私たちはつい、「一般的に求められる強み」に目を向けがちですが、実は強みの形は人それぞれ異なり、特に発達障がいのある子供たちは、独自の才能や可能性を秘めています。

発達障がいのある子供の強みは、定型発達の子供の強みとは少し異なることがあります。

例えば、独特の視点や鋭い感覚を持っていたり、特定の分野で驚くほどの集中力を発揮したりすることがあります。

また、創造的な発想をする子もいれば、論理的に物事を考えるのが得意な子もいます。

こうした強みを理解し、親が適切にサポートすることで、子供の自信を育み、可能性を広げることができます。

では、具体的にどのように子供のストレングスを見つければよいのでしょうか?次の章で詳しく見ていきましょう。

発達障がいの特性(代表例):【参考】厚労省

発達障がいの子供のストレングスを見つける方法

子供のストレングスを伸ばすためには、まず「どんな強みを持っているのか?」を見つけることが大切です。

発達障がいのある子供は、一般的な評価基準では測りにくいユニークな才能を持っていることも多く、親がそのサインに気づくことが重要になります。

ここでは、子供のストレングスを見つけるための具体的な方法を紹介します。

(1) 子供の行動・反応を観察する

まずは、日常の中で子供の行動をよく観察してみましょう。

✔ どんな遊びや活動に夢中になるのか?

✔ どのような場面で集中力を発揮するのか?

✔ どんな話題に興味を持っているのか?

例えば、ある子供は図鑑を何時間も眺めるほど好奇心旺盛かもしれませんし、別の子は細かいブロックを組み立てるのが得意かもしれません。

苦手なことを無理に克服させるのではなく、「自然に楽しめること」「負担なく続けられること」を見つける視点を持ちましょう。

(2) 子供の強みを知るための質問をしてみる

子供がどんなことにワクワクし、どんなことが得意なのかを知るために、以下のような質問をしてみましょう。

✔ 「どんな時が一番楽しい?」

✔ 「学校やおうちで、どんなことをしていると時間を忘れちゃう?」

✔ 「好きなことをもっとできるとしたら、何をしたい?」

親が積極的に聞いてあげることで、子供自身も「自分は何が好きなのか?」を意識しやすくなります。

(3) 環境を変えてみる

子供の得意なことを見つけるためには、普段とは違う環境や活動に触れさせてみるのも有効です。

✔ 新しい習い事や遊びに挑戦させてみる

✔ さまざまな体験を通して、子供の反応を観察する

✔ 家の中の環境を変え、集中しやすい環境を作る

例えば、言葉での表現が苦手な子が、絵を描くことで気持ちを表現できるとわかるかもしれません。

試行錯誤しながら、子供が輝ける環境を見つけていきましょう。

(4) 他者からのフィードバックを活用する

親だけでは気づけない子供の強みもあります。

学校の先生や療育の専門家、親戚や友人など、身近な人の意見を聞くことで、新たな発見があるかもしれません。

✔ 「この子はどんなことをしているときに輝いていますか?」

✔ 「学校や療育の場面で、どんなことが得意だと感じますか?」

親が気づいていなかった意外な才能が見つかることもあります。

他者の視点を活用しながら、子供のストレングスを見つけていきましょう。

次の章では、見つけたストレングスをどのように伸ばしていくか、具体的なサポート方法を紹介していきます。

ストレングスを伸ばすための親のサポート

子供のストレングスを伸ばしたいと思っていても、「何から始めればいいのかわからない」「忙しくて余裕がない」「うまくサポートできているのか不安」と感じる親御さんは多いのではないでしょうか。

発達障がいのある子供の育児は、日々の対応だけでも大変なことが多く、すべてを完璧にこなそうとすると親の負担が大きくなってしまいます。

大切なのは、「特別なことをしなければならない」と思い込まないこと。

日常のちょっとした関わり方を変えるだけで、子供のストレングスは自然に伸びていきます。

ここでは、親の心理的負担を減らしながらできるサポート方法を紹介します。

(1) 子供の「好き」を尊重する

子供が夢中になっていることがあるなら、それを大切にしましょう。

「役に立つかどうか」ではなく、「この子にとって楽しいかどうか」を基準にすることがポイントです。

✔ 「なんでこんなことが好きなんだろう?」と疑問に思うことでも、否定せずに見守る

✔ 「また同じことやってるの?」ではなく、「そんなに好きなんだね!」と肯定的な声かけをする

✔ 親が楽しそうに見守ることで、子供も自分の「好き」に自信を持てる

例えば、電車が好きな子なら、ただ「好き」で終わらせるのではなく、「どうしてこの電車が好きなの?」と興味を持って聞いてみると、意外な強みが見えてくることもあります。

(2) 「できること」を増やすより「得意なこと」を磨く

苦手なことを克服させようとすると、親も子供もストレスを感じやすくなります。

すべてを完璧にするのではなく、「この子の強みを活かせる場面を増やす」 という視点を持つと、サポートがぐっと楽になります。

✔ 苦手なことを無理に頑張らせるより、「得意なことを通じて成長できる方法」を考える

✔ 「何でも平均的にできる子」にするのではなく、「その子らしい個性」を伸ばす

✔ できないことを指摘するのではなく、「得意なこと」を具体的にほめる

例えば、人との会話が苦手な子でも、イラストを描くのが得意なら、「絵を使って気持ちを伝える方法」を試してみるのもいいでしょう。

(3) 小さな成功体験を積み重ねる

自己肯定感を高めるには、「できた!」という経験が何より大切です。

大きな目標を設定すると親も子供もプレッシャーを感じてしまうので、「小さな成功」を積み重ねることを意識しましょう。

✔ 「すごいね!」だけでなく、「○○ができるようになったね!」と具体的に伝える

✔ 失敗しても「やってみたこと」を評価する

✔ 結果よりも「挑戦したこと」に目を向ける

たとえば、「今日は最後まで座って絵を描けたね」「自分から先生に話しかけられたね」と、小さな成長を見つけて伝えてあげることで、子供は「自分はできる!」という自信を持つようになります。

(4) コミュニティ・専門家とつながる

育児の悩みを一人で抱え込むと、親自身が疲れてしまいます。

「誰かに頼ること」も立派なサポートの一つです。

✔ 同じような悩みを持つ親同士で情報交換する

✔ 専門家に相談することで、視野を広げる

✔ 「すべてを親がやる必要はない」と意識する

支援団体やオンラインコミュニティを活用すると、他の親の体験談を聞けたり、具体的なアドバイスをもらえたりすることもあります。

「自分一人で何とかしなきゃ」と思わず、頼れるものは積極的に活用していきましょう。

親が無理をしないことが、子供にとっても大切

子供のストレングスを伸ばすためには、まず親自身が余裕を持つことが何よりも大切です。

親がプレッシャーを感じすぎると、その気持ちは自然と子供にも伝わってしまいます。

「頑張りすぎなくていい」「ちょっとできたらOK」 という気持ちで、できることから少しずつ試していきましょう。

次の章では、実際にストレングスを活かして成長した子供たちの成功事例を紹介します。

具体的な成功例・エピソード紹介

実際に、発達障がいのある子供たちが自分のストレングスを活かし、自信を持って成長した事例を紹介します。

どのケースも、親が「できないこと」ではなく「できること」に目を向け、無理なくサポートすることで、子供の可能性が広がったものです。

① コミュニケーションが苦手だったが、イラストで気持ちを表現できるようになった(A君・小学3年生)

【課題】人との会話が苦手で、気持ちを伝えられない
A君は言葉でのコミュニケーションが苦手で、友達との関わりも少なく、学校でも孤立しがちでした。
親御さんは最初、「もっと話せるようになってほしい」と思い、会話の練習を試みましたが、A君自身がストレスを感じることが多く、うまくいきませんでした。

【サポート】得意な「絵」を通じて気持ちを伝える方法を試す
ある日、A君が家で夢中になってイラストを描いていることに親御さんが気づき、「もしかしてこれが強みかも?」と考えました。
そこで、A君が感じたことや好きなことをイラストで表現できるようサポート。
さらに、学校の先生にも協力をお願いし、授業で発表する代わりに「イラストで伝える」機会を作ってもらいました。

【結果】イラストをきっかけに友達ができた!
A君の絵がクラスで話題になり、興味を持った子供たちが話しかけるようになりました。
すると、A君も「絵を通じてならコミュニケーションができる」と自信を持ち、少しずつ会話にも挑戦できるように。
親御さんも、「話せるようになること」よりも、「A君らしく気持ちを伝えられる方法を見つけること」が大切だと実感しました。

② 数字へのこだわりを活かし、得意分野で自信をつけた(B君・小学5年生)

【課題】こだわりが強く、集団行動が苦手だった
B君は数字に強いこだわりがあり、日常の会話の中でも「電車のダイヤ」や「カレンダーの日付」に関する話題ばかりをしていました。
学校では、「他の子と話が合わない」「授業中もこだわりの話を続けてしまう」と先生から指摘を受けることが増え、親御さんも「もっと普通の会話ができるようになってほしい」と悩んでいました。

【サポート】数字の強みを活かせる場を作る
親御さんは、「数字へのこだわり=強み」と捉え、家でB君にスケジュール管理を手伝ってもらったり、電車の時刻表を調べてもらったりするようにしました。
また、学校の先生とも相談し、B君が得意な「計算力」を活かせるよう、授業での発表やクラスの計算係などを任せてもらうことに。

【結果】クラスの「計算博士」として認められる
先生の協力もあり、B君は「計算博士」としてクラスで頼りにされる存在に。
友達からも「B君に聞けばすぐわかる!」と認識され、数字に関する話題を通じて自然にコミュニケーションが取れるようになりました。
以前は「変わっている」と言われることが多かったB君ですが、「得意なことで役に立てる」という自信を持つことで、学校生活がより楽しいものになりました。

③ 音に敏感だったが、音楽の才能を伸ばして表現の場を見つけた(Cちゃん・小学2年生)

【課題】音に敏感で、日常生活でストレスを感じやすい
Cちゃんは聴覚過敏があり、大きな音や騒がしい場所が苦手でした。
そのため、学校の休み時間は一人で過ごすことが多く、集団行動も難しく感じていました。
親御さんは、「なんとか音に慣れてほしい」と考え、耳栓を使ったり、静かな環境を探したりしていましたが、根本的な解決にはなりませんでした。

【サポート】音への敏感さを「才能」として活かす
あるとき、親御さんが「Cちゃんは音に敏感だからこそ、音楽に向いているのでは?」と考え、ピアノを習わせてみることに。
すると、Cちゃんはすぐに音を覚え、繊細な表現ができることが分かりました。
さらに、学校でも音楽の授業でピアノ伴奏を担当する機会を作ってもらいました。

【結果】音楽を通じて自信をつけ、学校生活が楽しくなる
ピアノを始めたことで、「音に敏感でつらい」ではなく、「音を繊細に聞き取れる才能がある」というポジティブな捉え方ができるようになりました。
また、クラスの友達もCちゃんのピアノ演奏に興味を持ち、音楽を通じたコミュニケーションが増えました。
親御さんも、「苦手を克服するのではなく、才能として活かす」という視点を持つことができ、育児のストレスが減ったと感じています。

強みを見つけることで、子供も親も楽になる

今回紹介した3つの事例のように、「苦手をなくす」ことよりも「得意を活かす」ことで、子供は自信を持ち、前向きに成長できます。

親御さん自身も、「もっとこうなってほしい」と思う気持ちから、「この子の良いところを伸ばしていこう」という視点に変わることで、育児の負担が軽くなることが多いです。

行動の問題を持つ子どもの支え・育てる力を身に付けたい方

【まとめ】子供のストレングスを見つけ、無理なく伸ばしていこう

発達障がいのある子供を育てる中で、つい「苦手を克服させなくては」と考えてしまいがちですが、実はそれ以上に「得意なことを伸ばす」ことが、子供の自信や成長につながります。

子供のストレングスを見つけるには、「何に夢中になっているか?」 を観察したり、周囲の人からフィードバックをもらったりすることが大切です。

そして、見つけたストレングスを伸ばすためには、「好きなことを尊重する」「できることを増やすより、得意なことを活かす」「小さな成功体験を積み重ねる」 など、親が無理なく取り入れられる方法でサポートしていくことがポイントになります。

完璧なサポートをしようとすると、親自身が疲れてしまいます。

「すべてを親がやらなくてもいい」「できることを少しずつ試してみる」 という気持ちで、子供の成長を見守っていきましょう。

大切なのは、「子供の強みを信じること」 です。

どんな子にも、その子なりの素晴らしいストレングスがあります。

それを見つけ、無理なく伸ばしていくことで、子供も親も安心して前向きに歩んでいけるはずです。

まずは、今日からできる小さな一歩を踏み出してみましょう。

きっと、その先に子供の輝く未来が待っています。

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