社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)とは？【福祉系資格によるキャリアパス】

社会的包摂（ソーシャル・インクルージョン）とは何か？

社会的包摂（ソーシャル・インクルージョン）とは、すべての人々を社会の一員として取り込み、誰もが安心して暮らせる社会を目指す取り組みです。

逆に、社会的排除とは、仕事や地域とのつながりを失い、社会から孤立することを指します。

この記事では、福祉系の資格取得を目指している方々向けに、社会的包摂の背景や日本での展開、具体的な支援策と、それぞれの福祉系資格がどのように活かせるかについて解説します。

社会的包摂の背景

1980年代、先進国では雇用の不安定化や地域社会の崩壊により、多くの人々が社会から孤立する「社会的排除」が深刻な問題となりました。

これに対し、社会的包摂の考え方が広まり、孤立した人々が再び社会に参加できるようにする取り組みが各国で始まりました。

参考リンク　外務省　JAPAN SDGs Action Platform

日本における社会的包摂の展開

日本でも2000年代に入って「派遣切り」が大きな社会問題となり、多くの人々が職を失い、社会的排除のリスクが高まりました。

この問題に対応するため、政府は2011年1月に「社会的包摂戦略（仮称）」の策定に向けて「『一人ひとりを包摂する社会』特命チーム」を設置しました。

その後、東日本大震災が発生し、被災地では多くの人々が住居を失い、生活の基盤を失いました。

このような背景から、社会的包摂の重要性がさらに認識されるようになりました。

参考リンク　厚生労働省　社会的包摂を進めるための基本的な考え方

社会的包摂の課題と対応策

社会的包摂の課題としては、失業、住居喪失、健康不安、生活苦などの問題が連鎖的に起こり、個人を苦しめることが挙げられます。

特に被災地では、これらの問題が一度に発生しやすく、復興住宅に入居後も孤立するリスクが高まります。

これに対応するためには、縦割りの制度を克服し、包括的かつ予防的な支援が必要です。

参考リンク　政府広報オンライン

具体的な支援手法と福祉系資格の役割

支援手法としては、支援が必要な人々に直接働きかける「アウトリーチ」が重要です。

アウトリーチとは、支援が必要な人々のもとに支援者が直接出向いて、必要な情報やサービスを提供する方法です。

これにより、声を上げられない人々にも支援が届きます。

以下に、具体的な支援手法とそれに関連する福祉系資格を紹介します。

社会福祉士

社会福祉士は、社会的包摂を推進するために重要な役割を果たします。

彼らは、個々のニーズに応じた相談とサポートを提供し、地域の他の支援機関やボランティアと連携し、包括的な支援ネットワークを構築します。

また、社会福祉士は啓発活動や政策提言も行い、現場での経験をもとに政策立案者に対して有益な提言を行います。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は、精神的な問題を抱える人々の支援を行います。

彼らは、精神科医療機関や地域の相談機関で働き、利用者の生活環境の改善や社会復帰をサポートします。

精神保健福祉士は、メンタルヘルスの専門知識を活かして、地域社会でのアウトリーチ活動を行い、孤立した人々に支援を届けます。

介護福祉士

介護福祉士は、高齢者や障害者の生活支援を行います。

彼らは、日常生活の介護を提供し、利用者の生活の質を向上させるための支援を行います。

介護福祉士は、在宅介護やデイサービスなどで働き、利用者が地域で安心して暮らせるように支援を提供します。

保育士

保育士は、子どもの成長と発達を支援する専門家です。

彼らは、保育園や幼稚園で働き、子どもたちが健やかに育つ環境を提供します。

保育士は、地域の子育て支援センターなどでの活動を通じて、子育て中の家庭をサポートし、親子が社会とつながる機会を増やします。

介護支援専門員（ケアマネジャー）

介護支援専門員は、介護サービス利用者とサービス提供者をつなぐ役割を果たします。

彼らは、利用者の状況を評価し、適切なサービス計画を作成します。

ケアマネジャーは、介護が必要な人々が適切な支援を受けられるよう、地域のサービス提供者と連携して支援を提供します。

認定心理士

認定心理士は、心理的支援を提供する専門家です。

彼らは、カウンセリングや心理療法を通じて、精神的な問題を抱える人々を支援します。

認定心理士は、学校や医療機関、地域の相談機関で働き、個人の心理的な健康を支援します。

リハビリテーション職

リハビリテーション職（理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など）は、身体的、精神的な機能の回復を支援します。

彼らは、医療機関やリハビリテーション施設で働き、利用者の生活の質を向上させるための支援を行います。

社会教育主事

社会教育主事は、地域社会での教育活動を推進します。

彼らは、地域の住民が学び合い、協力し合う環境を整えるための活動を行います。社会教育主事は、地域の図書館や公民館での活動を通じて、住民の生涯学習を支援します。

社会的包摽の目指す社会像

社会的包摂の推進により、誰もが自分の潜在能力を発揮し、社会の中で役割を持ってつながり合う社会を目指します。

これにより、以下のような効果が期待できます。

個人の成長と社会参加：すべての人が教育や就労、地域活動に参加する機会を持ち、自分の能力を最大限に発揮できる環境を整えることができます。
これにより、個々人の自尊心や自己実現が促進され、社会全体の活力が向上します。
地域社会の強化：地域のつながりを強化し、相互に支え合うコミュニティを形成することで、孤立や排除を防ぎます。
地域での支援ネットワークが充実することで、災害や緊急時にも迅速かつ効果的な対応が可能となります。
経済的安定：すべての人が安定した収入源を確保できるよう支援することで、貧困や経済的不安から解放されます。
これにより、消費活動が活発化し、地域経済の活性化につながります。
精神的健康と福祉：社会的なつながりを持つことで、孤独感や精神的ストレスが軽減され、心の健康が保たれます。
支援を受ける側だけでなく、支援を提供する側も、助け合うことで精神的な充足感を得られます。
多様性と共生：多様な背景や能力を持つ人々が共に暮らし、互いに尊重し合う社会を実現することで、文化的な豊かさや社会の調和が促進されます。