誰かのために頑張る自分が、いつの間にか苦しくなる
福祉・介護の現場では、「困っている人がいたら手を貸す」「自分にできることは進んでやる」という姿勢を持っている人がとても多いと思います。
この仕事に携わっている時点で、すでに“人に優しくありたい”という気持ちが根底にある方がほとんどではないでしょうか。
しかし、ふとした瞬間に感じる疲れやモヤモヤ。
「なんだか最近、私ばかり頼られている気がする」
「一度助けたら、それがいつの間にか当然みたいになっている」
「本当は断りたいのに、言えなくてつらい」
このような気持ちになったことはありませんか?
それは“心の中のサイン”です。
あなたの優しさが少しずつ擦り減っている証拠かもしれません。
親切が、次第にストレスに変わる仕組み
現場でのよくある一場面。
・「今日は夜勤明けの○○さんが疲れていそうだったから、代わりに記録を少しやっておこう」
・「送迎に遅れが出そうだから、今日は私が回っておくよ」
・「新人さんが不安そうだから、ちょっとフォローに入っておこう」
最初は“気遣い”や“チームワーク”としての行動。
でもそれが何度も繰り返されるうちに、まわりの人が無意識に「この人はやってくれる人」と認識しはじめます。
その結果…
頼まれなくても「やっておくのが当然」と思われてしまう
感謝されなくなり、“業務の一部”とみなされる
「なんで私だけ?」という疑問が芽生える
そして、当初は“自分がやりたいからやった”行動が、
やがて“やらなければならない”義務のように感じられ、心の負担へと変わっていくのです。
「優しい人」に偏る負担【福祉・介護職ならではの現象】
福祉・介護の職場では、“見えないタスク”がとても多いのが特徴です。
たとえば以下のようなもの
・利用者の細かな変化に気づく観察力
・他職種との連携・ちょっとした声かけや調整
・ご家族への配慮や報告
・職場内の雰囲気づくり、ムードメーカー的役割
・後輩への気遣い、サポート
こういったことは「業務」として数値化されにくい一方で、実はチーム全体の安定や信頼に大きく関わっています。
だからこそ、真面目で気が利く職員ほど、“本来の担当業務以上のこと”を無意識に背負いがちです。
そして、周囲は「やってくれて当然」と錯覚し、結果としてその人だけに負担が集中することも珍しくありません。
“いい人”でい続けることが、逆にチーム全体のリスクになることも
ここで一つ、少し視点を変えた問いかけをしてみます。
「あなたが無理をして親切にしていること、それはチームのためになっているでしょうか?」
実は、優しい人が我慢を続けていると、以下のような副作用が生まれます。
他のスタッフが“気づく力”や“対応力”を育てにくくなる
不公平感が職場に漂い、静かな分断が生まれる
優しい人自身が限界を迎えたとき、突然の離職・体調不良に発展する可能性
つまり、“優しさの偏り”は、一見良いことのようで、実は職場全体の持続性を損なう原因にもなるのです。
自分を守る工夫①:「私は今、無理していないか?」と定期的に問う
まず、親切が習慣化しそうな場面では、自分に問いかけてみてください。
このチェックを習慣にするだけでも、心のバランスを崩しにくくなります。
自分を守る工夫②:「特例」であることを伝えるひと言を添える
ささやかなことですが、行動のあとに次のような言葉を添えるだけで、相手の受け取り方が変わります。
これは「当たり前ではないよ」というメッセージをやんわり伝えるテクニック。
親切の“希少価値”を保つことで、自分の役割と線引きを守る効果があります。
自分を守る工夫③:頼られたら、すぐに引き受けるのではなく“ワンクッション置く”
たとえばこう言ってみるのはどうでしょう
“反射的に手を貸す”のではなく、“判断する余地を持つ”だけでも、かなり違ってきます。
管理者・リーダー層ができる支援:優しい人を守るマネジメント
もしあなたが管理者やサービス管理責任者であれば、
“優しい人に偏る負担”を未然に防ぐのは、チーム全体の健全性を保つ上でとても重要です。
チェックポイントとして
・特定のスタッフばかりが“見えない仕事”をやっていないか
・「○○さんに任せておけば大丈夫」という依存的な風土が生まれていないか
・感謝や評価の言葉がしっかり伝えられているか
特に、日報やミーティングなどで見えづらい貢献を「見える化」し、言葉で認めることは、スタッフのメンタルケアにもつながります。
やさしさの循環を、無理なく長く続けるために
親切や気配りは、福祉・介護職においてかけがえのない力です。
でもその親切が、あなたを苦しめたり、職場の不均衡を生んでしまっては、本末転倒です。
“優しさ”は、自分の心と体に余裕があるときにこそ、真の力を発揮します。
だからこそ、
自分を守ること
適切な距離を取ること
周囲と支え合える関係性を育むこと
これらは“冷たい”ことではなく、“持続可能な優しさ”のための大切なスキルです。
あなたの優しさを、無理なく、長く、心地よく。
ぜひ、そんな働き方を目指してみてください。
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