物忘れか?認知症か?
年齢を重ねると、記憶力が低下することは一般的な現象です。
しかし、この低下が「ただの物忘れ」なのか、それとも「認知症」の前兆なのかを区別することは難しいことです。
この記事を通して認知症について知り、認知症の予防に役立てて下さい。
物忘れと認知症の違いについて
物忘れと認知症は、両方とも記憶の問題を引き起こしますが、その原因と症状には重要な違いがあります。
「ただの物忘れ」とは、普段の生活である程度のことを忘れたり、覚えにくかったりすることを指します。
例えば、鍵をどこに置いたか忘れたり、最近知り合った人の名前を思い出せなかったりすることがあります。
このような場合、一時的なものであり、多くの人が経験することです。
一方、「認知症」とは、脳の機能が損なわれることで発症します。
症状は、記憶力の低下だけでなく、判断力や言語能力、社会的な行動能力なども低下し、生活に大きな支障が出てきます。
ただし、一時的な物忘れと認知症の境界は明確ではありません。
ですが、物忘れが頻繁に起こり日常生活に支障が出てくる場合、または覚えにくいことが続く場合は医師に相談することが必要です。
医師は検査や評価を行い、正確な診断を下すことができます。
このように、同じ物忘れの症状があったとしても、ただの物忘れなのか、認知症なのかという判断は難しいものです。
しかし、これらを見極めるためのポイントがあります。
物忘れと認知症の違いを確認し、それぞれの症状や原因について説明していきます。
物忘れの原因と症状
物忘れは、日常生活でよく起こる現象であり、忙しい日々の中で情報過多になったり、ストレスや疲労によるものが一般的な原因です。
また、年齢とともに記憶力が低下するため、高齢者に多く見られます。
物忘れの症状は、特定のことを思い出せない、忘れ物が多い、予定を忘れる、名前を思い出せない等が多くみられます。
これらの症状は、一時的なものであり、日常生活に大きな支障をきたすことはほとんどありません。
ただし、物忘れが頻繁に起こる場合や、症状が強い場合は、ストレスや疲労、睡眠不足などが原因となっている可能性があります。
健康的な生活習慣を維持し、ストレスや疲労を軽減することで、物忘れを改善することが期待できます。
一時的な物忘れであれば、さほど気にする必要はありません。
日常的な忘れ物や思い出せないことが増えても、それが生活に支障をきたすほどではなければ、健康的な生活習慣を維持することで改善することが期待できます。
しかし、物忘れが頻繁に起こる場合や、症状が強い場合は、原因が疾患である可能性があるため、医師に相談することが必要です。
また、物忘れの症状が認知症につながる可能性もあるため注意が必要です。
一般的に、日常的な物忘れが自分自身の生活に支障をきたしていない場合は、過剰に心配する必要はありません。
認知症の原因と症状
認知症は、脳の機能が障害されることで生じる症状です。
認知症の原因は、加齢や脳の病気、脳血管障害などがあります。
症状としては、記憶力や判断力、言語機能、空間認知能力などの低下があり、日常生活に支障をきたすようになります。
初期段階では、物忘れや予定を忘れがち、言葉が出てこないなどの症状が現れます。
進行すると、周囲の人々を見分けられなくなる、身の回りのことができなくなる、対人関係が希薄になるなど、深刻な症状が現れます。
認知症は進行性の疾患であり、早期発見と治療が必要です。
医師の診断を受け、早期から治療を行うことで、症状の進行を遅らせることができます。
認知症にならないためには、運動や読書など、脳を刺激する活動を継続することが大切です。
また、ストレスや睡眠不足を避け、健康的な生活習慣を維持することも重要です。
認知症の分類について
医師の診断を受け、認知症と診断された場合、主に次に挙げる4つの型に分類されます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多いとされており、男性よりも女性に多く見られ、近年増加の傾向があるとの報告があります。
脳にアミロイドβと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊れて、神経細胞が減少することで、認知機能に障害が起こると言われています。
また徐々に脳全体も委縮していき身体の機能も失われていきます。
アミロイドβが蓄積される原因については、加齢や遺伝が影響するとされていますが、まだ完全には分かっていません。
アルツハイマー型認知症の初期症状は、道に迷ったり、金銭管理ができなくなったり、同じ質問を繰り返す等があります。
記憶障害や錯乱状態も増え、徐々に日常の作業をこなすのに時間がかかるようになり、判断力の低下が現れます。
感情や人格の変化がみられるようにもなり、家族や知人の判断もつかずコミュニケーションがとれなくなってきます。
血管性認知症
血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症です。
いわゆる脳卒中と呼ばれる、脳梗塞や脳出血などの脳血管の病気により認知症が引き起こされる状態を指します。
脳梗塞や脳出血は、高血圧、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病が原因で引き起こされる病気です。
血管性認知症では、そのほかの認知症でもみられる記憶障害や見当識障害、注意障害、言語障害がみられます。
脳血管障害は、脳のさまざまな部位に起こるため、症状もさまざまです。
脳血管認知症では、脳血管に障害を受けている部分の機能は低下しますが、障害を受けていない正常な部分の機能は保たれます。
このように、正常な部分と症状が点在している状態のことを「まだら認知症」と言います。
血管性認知症を予防するためには生活習慣を改善し、血管障害を予防することが大切です。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症はレビー小体という異常なたんぱく質が脳の神経細胞にたまり発症します。
レビー小体が神経細胞内に溜まると神経細胞が破壊されてしまい、さまざまな症状を引き起こします。
認知症以外にも、初期のうちからパーキンソン症状という運動が障害される症状が併発されることがよくみられます。
筋肉や関節が硬くなる、背中が丸まり姿勢が悪くなる、手足の震え、動作が緩慢になる、乏しい表情、ボソボソと口ごもった話し方、姿勢が悪くなる、歩きづらくなる、転倒しやすくなるなど、身体にさまざまな症状が生じます。
レビー小体型認知症の主な症状は、他の認知症と同様に記憶障害や見当識障害、注意障害がみられますが、特徴的な症状は、幻視や幻聴といった幻覚症状です。
幻視は「窓の隙間から子供がこっちを見ている」「テーブルの上に虫の行列がいる」など、その場にいるはずのない人や物、あるいは想像上の物が見えるといったことを主張します。
幻聴は、周りに誰も存在していないのに、「誰かが私の話をしている」「ずっと大きな物音がする」などと主張します。
幻視も幻聴も、本人たちには、実際に起こっているかのように、はっきりと感じとり、「誰かいたかも?」「何か聴こえたかも?」といったあいまいな主張ではなく、具体的に強く主張することが多くみられます。
このような幻覚は、周りの人たちからの理解が得られにくいものです。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症とは脳の一部である「前頭葉」や「側頭葉前方」の神経細胞の中で、「タウ蛋白」や「TDP-43」といった、異常なたんぱく質が関与することで引き起こされる認知症です。
なぜこのような変化が起こるのかは解明されていません。
前頭葉は大脳の一番前にある部分で、人間の運動、言語、感情、思考、判断、情動のコントロール、コミュニケーション等を司る領域です。
側頭葉は大脳両側面の下部にある部分で、聴覚認知、言語の受容、視覚的な記憶、言語的な記憶および感情等を司る領域です。
前頭葉と側頭葉の委縮により、これらが正常に機能しなくなり認知症が引き起こされます。
特徴的な症状は、度を越した悪ふざけ、万引きのような軽犯罪、無関心・自発性の低下など理性的な行動ができなくなることや、言葉がでにくくなるといったことが特徴です。
症状は何年もかけて、ゆっくり進行するケースが一般的です。
初期に人格変化や行動異常が現れたり、無気力・無関心の症状が現れたりします。
レビー小体型認知症でも見られる、パーキンソン症状が現れることもありますが、人によってさまざまです。
前頭側頭型認知症の発症年齢は、比較的若い50〜60代と働き盛りの年代での発症が多く見られます。
本人が「自分は病気である」という自覚が乏しく、また特徴的な症状が多いことから、対応が困難となり家族による介護負担は大きくなります。
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