どうなる?どうする?柔道整復師の未来
日本では、医療現場において柔道整復師が活躍しています。
しかし、現在の医療制度や技術の進歩によって、柔道整復師の存在意義に疑問を唱えている人も少なくありません。
本当に柔道整復師は必要なのであろうか?
現在、医療機関には医師や看護師、理学療法士、作業療法士など多くの専門職が存在しています。
その中で、柔道整復師が果たす役割は限定的であり、他の職種が対応できる場合が多いと言えます。
また、柔道整復師の資格取得には多くの時間やコストがかかり、資格を持っていても就職先に恵まれないという事実もあります。
以上のことから、柔道整復師について考えてみたいと思います。
整骨院で働く柔道整復師たちの不満
多くの柔道整復師は整骨院で働いています。
どの職種や職場においても、働き方に不満はあることかと思いますが、整骨院で働く柔道整復師が抱く不満には、どのような不満があるかいくつか挙げてみました。
長時間労働
整骨院は夜間や週末にも営業している所が多く、柔道整復師は残業や休日出勤が増えてくることがあります。
また、患者さんの予約受付が増えていくことで、治療時間が予定よりも延びることもあります。
結果としてプライベートな時間が少なくなっていく事で不満が溜まっていきます。
賃金の低さ
整骨院は個人経営である事が多く、そのような整骨院で雇われている柔道整復師は賃金が安いと感じているそうです。
また、保険治療の場合、治療内容に対し顧客単価が低く報酬が少ないことで、スタッフに還元される分が上がりにくいため不満につながる場合があります。
ストレス
患者さんの症状が重く治療が思うように進まない場合、ストレスを感じることがあります。
また、患者さんの要望やクレームに対応することもストレスの原因になる場合があります。
管理体制の問題
整骨院の管理体制が不十分である場合、柔道整復師は業務に支障をきたすことがあります。
たとえば、スタッフの人数が少なく、業務量が増えた場合、残業をせざるを得なくなることがあります。
柔道整復師を雇う側は、柔道整復師の意見を聞き入れ、適切な労働環境を整えることが大切です。
管理柔道整復師の苦悩
整骨院を経営している柔道整復師の方にも不安はあります。
いわゆる管理柔道整復の立場である方の不安は次のことが挙げられます。
間違った保険請求
患者さんを治療した療養費の保険請求は繁雑な手続きであり、請求書の作成や提出に誤りがある場合、保険者からの支払いが遅延したり、請求が却下されたりする可能性があります。
月ごとに提出する書類が返戻になると、本来得ることができた報酬を受け取ることができなくなったり、翌月に書類を再提出するなど事務処理が増えてしまいます。
このような失敗は、患者さんや整骨院にとっても不利益をもたらすため、管理柔道整復師は正確な請求手続きを行うことが求められます。
患者さんとのトラブル
患者さんは医療費の一部を所得から控除することができるため、治療を終えた後に領収書の発行や診療明細書の発行を患者さんから求められます。
しかし、領収書や診療明細書の発行漏れがある場合、患者さんが医療費控除を受けることができなくなり不満を抱くことがあります。
医療費控除を受けることができなかった患者さんは、不満を抱きクレームをつけることがあります。
このようなトラブルは管理柔道整復師にとってストレスや不満となり、不安を感じる原因となります。
医療保険の変更や改定
国は保険診療の点数や対象の治療内容を定期的に変更することがあり、管理柔道整復師はその変更に対応する必要があります。
変更があるたびに保険請求の方法や手順が変わるため、管理柔道整復師は常に最新の情報をキャッチアップする必要があります。
整骨院は不正請求の温床?
整骨院で勤務する上での不安や不満について述べましたが、世間では整骨院は不正請求の温床だという声もあります。
全ての整骨院がそうではないということは言うまでもありませんが、残念ながら整骨院において不正請求を行う人がいることも事実です。
一般的には、次のような不正請求が行われることがあります。
患者の訴えとは違う部位の治療
例えば患者さんの主訴は右肩を治療してほしいと施術者に伝えるが、施術者の判断で患者さんに説明や同意を得ないまま右肩以外の部位を施術し、主訴以外の部位まで保険請求することです。
これは、患者さんが知らずに行われることであり、患者さんを被害に遭わせることに繋がります
水増し請求
整骨院で保険診療を行った場合、整骨院は月末で締め、翌月の始めに保険者へ療養費を請求するための書類を送ります。
対象の患者さんが、月に何日通って治療したかを記載するのですが、実際には通院していない日まで通院したと記載し、治療日数を多く虚偽報告して療養費を得ることです。
保険適用外の治療の請求
保険が適用されない治療を行ったにも関わらず、療養費を請求することがあります。
保険診療で行う施術の内容は定められており、対象外の施術方法で療養費を保険請求することは違法な手段となります。
例えば慰安やリラクゼーション目的によるマッサージのみの施術であったり、酸素カプセルに入っただけの治療のみで保険請求をする場合などが当てはまります。
整骨院で働く柔道整復師や管理柔道整復師は、不正請求を行わないように、法令や倫理規範を遵守することが求められます。
柔道整復師資格は廃止にするべき?
ここまで、柔道整復師に対してマイナス面を主に書き出してみましたが、私たちの社会において、柔道整復師という職業はとても重要な役割を果たしていることは間違いありません。
しかし、国家資格としての必要性については様々な意見があるようです。
なかには柔道整復師は国家資格から廃止すればいいという意見も耳にします。
以下は、柔道整復師が無くても良いという方たちの意見の一例です。
職種の多様化
現代の医療分野では、治療やリハビリテーションを行う専門家が多様化しています。
たとえば、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などがあります。
そのため、柔道整復師がいなくても、他の専門家が代替できる場合があります。
介護分野への注力
高齢化社会の進展に伴い、介護の需要が高まっています。
柔道整復師による療養費を削減し、介護分野へ公費を回せば良いのではないかと言う声もあります。
介護分野の育成に注力することで、医療・介護における専門職の人材不足を解消することが期待できるといった意見も耳にします。
資格の乱立問題
柔道整復師の有資格者が増えるとともに、整骨院の数も軒並み増えています。
整骨院が増えれば、それだけ患者の選択肢は増え、1つの整骨院に通う患者さんの数は少なくなることは必然です。
過当競争になれば、淘汰される柔道整復師が増え失業者も増えます。
柔道整復師が整骨院以外での働き方を考えてみると、柔道整復師が果たす役割は限定的であり、他の医療福祉系の職種で十分対応できる場合が多いと言えます。
そのため、この先柔道整復師を増やす必要性は低いといった意見もあります。
不正請求への厳しい目
柔道整復師は整骨院を開業でき、保険診療を行うことができます。
最近では実務経験を経て研修を受講しなければ開業権が与えられなくなっており、保険の取り扱いについて厳格になってきました。
しかし、残念ではありますが、ごく稀に保険診療を行い不正に療養費を請求するといった行為を、未だ行う柔道整復師がいます。
このような不正行為を行っていると、真面目に業務を行っている柔道整復師も同じような目で見られてしまいます。
ごく少数の人が不正行為を行うことで、全体的なイメージがダウンしてしまうことは否めません。
ただし 、現在の医療現場での柔道整復師の重要性は依然として高く、柔道整復師の技術や知識が必要な患者さんが多く存在することから、柔道整復師の役割がなくなることは考えにくいという意見もあります。
柔道整復師の未来
柔道整復師という資格について考えてみましたが、この資格の未来については、自分たち自身で業界を守っていかなければなりません。
現在、医療制度や社会情勢の変化によって、柔道整復師の存在価値が問われている時代です。
しかし、自分たちの技術や知識を磨き、より高度な医療を提供することで、その存在価値を高めることができることでしょう。
そのためには、業界内での協力や情報交換が欠かせません。
常に最新の情報や技術にアンテナを張り、専門知識の向上に努めることが必要です。
同時に業界内での団結力を強め、一丸となって問題解決に取り組むことが求められます。
そのためには、各地域での交流会や研修会、学会の参加など、積極的に情報共有や交流の場を作ることが重要です。
信頼を得るためにも、柔道整復師としての自覚と誇りを持ち、常に高いレベルの医療を提供することが必要です。
自分たちの力で業界を守り、発展させていくことで、多くの人たちの健康を守ることができると信じています。
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