福祉の仕事に携わる人なら知っておきたいICF(生活機能分類)とは?

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福祉職なら知っておきたいICFとは?

社会福祉士やケアマネージャーの勉強をしている皆さんは、ICFという言葉を耳にしたことがあると思います。

ここでは、ICF(生活機能分類)について説明したいと思います。

ICFについて

ICF(生活機能分類)は2001年にWHO(世界保健機構)によって提唱されました。

International Classification of Functioning, Disability and Healthの略で、世界共通の生活機能分類です。

ではこの「生活機能分類」って、一体何なんでしょうか?

かんたんに言い換えれば、人の健康状態​​を取り巻く様々な事柄を分類したものです。

ICFの目的ってなに?

ICFは、さまざまな医療や福祉など、専門分野や異なった領域で役立つことを目指しています。

目的を個別にみると以下の通りです。

・健康に関連する状況や因子を理解する。
・共通言語を確立し、コミュニケーションを改善する。
・各国、各種の専門保健分野、各種サービスの違いを超えたデータの比較。
・健康情報システムに用いられる体系的コード化用分類リストの提供。

上記の目的は相互に関連しています。

異なる文化圏での保健政策や、サービスの質の保証、評価などを行うためには実用的なシステムの構築が求められているからです。

ICFの分類ってなに?

ICFは、まず「健康状態」を基本と考えます。

その「健康状態」は「生活機能」と「背景因子」から成り立っており、これらの組み合わせにより分類されます。

これらをバランス良く構成させるためには、偏った視点にとらわれないよう注意が必要です。

以下の図を参考にICFについてイメージしてみましょう。

参考:厚生労働省 ICF(国際生活機能分類)ー「生きることの全体像」についての「共通言語」ー https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ksqi-att/2r9852000002kswh.pdf

健康状態について

健康状態は、病気の有無、症状、日々の体調変化や、肥満、妊娠、ストレス、加齢などを指標として考えます。

生活機能について

ICFの中心的な概念であり、①心身機能・身体構造②活動③参加の3つから構成されています。

①心身機能・身体構造
体の生理的機能や心理的機能です。
体を動かす運動器機能、視覚、聴覚、触覚など感覚機能、消化器、呼吸器などの内臓機能、神経系などの精神機能を指しています。
身体構造とは、四肢や内臓などの体を構成する人体の解剖学的部分のことです。

②活動
生活する上での行動や行為です。
起きる、寝る、移動するなど必要な日常生活動作をはじめ、家事や仕事、余暇活動なども含みます。
活動の分類は、している活動と、できる活動の2つに分け構成されます。
している活動は、普段の日常生活動作レベルを指しています。
できる活動は、リハビリの場面では1人でできるが、ある条件の環境では1人でできない動作を指します。

③参加
地域社会や家庭内へ関与し役割を果たすことです。
職場や学校などの組織で役割を果たしたり、地域行事や集会に参加、家族や親類との繋がりなどがあります。
活動と参加は密接な関係にあります。

背景因子について

生活機能に大きな影響を与える因子です。

これは、場合によっては生活機能の低下を引き起こす原因となることもあります。

背景因子は①環境因子と②個人因子の2つの因子からなります。

①環境因子
その人を取り巻く物的環境・人的環境すべてを指しています。物的環境とは建物の構造、移動に関する道路や交通機関、自然環境などが挙げられます。
人的環境とは家族や友人、職場の仲間や上司など、周囲を取り巻く人たちとの関わりなどが挙げられます。
また、行政との関わりや医療福祉のサービスによる制度的環境もあります。

②個人因子
その人が持つ固有の特徴を指します。
性別、年齢、家族構成、学歴、職歴、病歴、価値観、生活スタイルなどが挙げられます。

ICFの活用法

医療や福祉の現場では、支援が必要な方の生活状態やQOL(生活の質)を向上させるためにICFを活用することができます。

例えば次のような方がいたとして考えてみましょう。

例)高齢から脚の力が弱くなり、自宅の段差でつまづき転倒した際に、下肢の大腿骨頸部骨折を発症してしまった。
手術をした後入院となり、ひと通りの治療を終えたため退院となった。
自宅に戻ったが、自宅には段差が多く、一人で移動することが困難となった。
また転んでしまうかもという不安があり、外出する意欲が低下していった。
その後、寝たきりとなり自宅に閉じこもりの生活になってしまった。

以上の例題を踏まえて、ICFを活用してみます。

「健康状態」について

この場合の「健康状態」は、大腿骨頸部骨折の発症から心身機能が低下し寝たきりの生活となった、ということに焦点をあてます。

「生活機能の分類」について

①心身機能・身体構造
骨折した箇所の痛み、筋力低下、歩行能力の低下、意欲の低下などが挙げられます。

②活動
また転んでしまうのではないかという不安から日常生活動作が低下し、寝たきりになっています。

③参加
自宅に閉じこもりがちとなり、行事や集まりに参加することができなくなっています。

「背景因子」について

①環境因子
自宅には段差が多く、移動の障害となっています。

②個人因子
足の力が弱くなっており、また転んでケガをしてしまわないか不安があり一人で移動ができなくなっています。

このような背景因子から、心身機能の低下やADLの低下が発生し、活動制限や参加制約が生じていることが考えられます。

それでは、この分類を踏まえて本人にどのような支援ができるのか考えてみます。

ICFを活用した支援方法

まず本人に直接働きかけることは、リハビリを行い心身機能の向上を促すことです。

介護保険のサービスが適用するのであれば、介護サービスの利用を検討しましょう。

デイサービスやデイケア等に通い、集団の場へ参加してリハビリに取り組んでもらいます。

一人で移動が困難なので、福祉用具活用も考えてみます。
必要であれば、杖、歩行器、車いすなど、本人のADLに応じた福祉用具を選定します。

自宅には段差が多く移動が大変です。
介護保険での住宅改修が可能であれば、自宅内の段差、玄関の段差を解消する工事やスロープの設置、必要な場所に手すりの設置を検討してみましょう。

お風呂場では、安全に座って入浴できるようにシャワーチェアの購入を考えてみてもいいでしょう。
こちらも介護保険のサービス範囲内です。

自宅内の移動が楽になると、転倒の不安が解消されますね。

そして、デイサービス等への参加は同じ境遇の仲間たちと悩みを共有することで、周りの人たちと同じ目標をもった参加活動ができます。

そして、リハビリが進めば心身機能が向上して、外出したいという意欲が向上していくことも期待できますね。

社会参加活動が増えていくことで、新たな仲間と出会うことも期待できます。

以上の例は、ほんの一部です。
もっと掘り下げて考えてみてみると、様々な視点から見えてくることができるでしょう。

最後に、このような流れにおいての支援を考えていく時には、本人にとってのマイナス面を補っていくだけに捉われず、本人がもつ強味、いわゆる「ストレングス」を引き出すことでプラス面を強化しながら問題を解決に導いていくことも重要です。

まとめ

ICFの概念を正しく理解し本人のできることや人生の背景に着目することで、本人が持つプラス面を重視した支援ができることでしょう。

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